~とんぼ玉~ Ancient & Antique Glass Beads

古代から近代のアンティークのとんぼ玉をご紹介します

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近世トレードビーズ(交易用ビーズ)

16世紀から20世紀初頭にかけ、ヴェネチアではアフリカ交易用におびただしい種類と量のビーズ(とんぼ玉)が作られました。色鮮やかな美しいガラス・ビーズは、アフリカの人々を魅了し、金や象牙、そして奴隷との交換が行われました。これらのビーズは北米先住民族との交易にも使われ、毛皮等と交換されました。
オランダボヘミア等の他のヨーロッパ諸国も無数の交易用ビーズ(トレードビーズ)を生産し、莫大な利益を得ました。

これらのビーズは、特に西アフリカに多く残されています。そして現在、アフリカの人々に代々使われてきたビーズは、ヨーロッパのコレクター達の目に留まり、アフリカからヨーロッパへ逆流するという現象が起きています。

シェブロン "Chevron", African trade bead シェブロン 大玉

19th century
6-layer 12-point blue "Chevron"
Venetia, African trade bead

Length: 3.4cm Diameter: 2.7cm

6層(内側から白-青-白-赤-白-青)。樽型。
典型的なブルー・シェブロン。
ヴェネツィアンビーズの最も古い意匠のひとつ(後にオランダでも作られました)。

大きなものは、王や族長、地位の高い人物が身に着けました。

シェブロン "Chevron", African trade bead シェブロン "Chevron", African trade bead

シェブロン(用語集へ)


シェブロン "Chevron", African trade bead7層シェブロン拡大 7-layer "Chevron", African trade bead シェブロン 大玉

19th century
7-layer 12-point blue "Chevron"
(White-Blue-White-Dark Red-Red-White-Blue)
Venetia, African trade bead

Length: 3.4cm Diameter: 2.7cm

19th century
blue "Chevron"
Venetia, African trade bead

Length: 2.9cm Diameter: 2.3cm

円筒型のブルー・シェブロン。
一見6層に見えますが、実は色合いの異なる赤が2層あり、7層になっています。画像では分かりにくいですが…
(内側から白-青-白-赤-赤-白-青)。

シェブロン "Chevron", African trade bead シェブロン "Chevron", African trade bead

シェブロン "Chevron", African trade beadシェブロン "Chevron", African trade bead シェブロン 大玉

19th century
6-layer 12-point blue "Chevron"
Venetia, African trade bead

Length: 3.4cm Diameter: 2.4cm

6層(内側から白-青-白-赤-白-青)。樽型。
典型的なブルー・シェブロン。


赤シェブロン "Chevron", African trade bead赤シェブロン "Chevron", African trade bead 赤シェブロン

Early 20th century
5-layer red "Chevron"
Venetia, African trade bead

Length: 3.0cm Diameter: 2.1cm

数の少ない赤シェブロン。5層(内側から黒-赤-黒-白-赤)。樽型。

シェブロンの中では最も後期のプロダクションのものですが、赤は稀少です。
ただこちらは、もしかすると、当時(1920年代)のデッドストックのOLDのバー(cane)から最近削りだしたものかも知れません。

最内層の断面は鋸歯文様になっていません。作りは、時代が古いシェブロンの方がやや良いです。


キング  Yellow bicone "King" with stripes, African trade bead キング(黄)

19th century
Yellow bicone "King" with stripes
African trade bead

Hight: 1.9cm Diameter: 2.0cm

族長、王族に用いられたことから、"キング"と呼ばれます。緑・黄・黒等のソロバン型のビーズに線が描かれたものが一般的。
金の交易に使用され、同じ重さの金と交換されたといわれています。


スパニッシュ  "Spanish" or "Nueva Cadiz", African trade bead "Nueva Cadiz" ヌエバ カディス
/ スパニッシュ
    

probably mid 19th century (or mid 16th century)
"Spanish" or "Nueva Cadiz" bead
3-layered drawn bead, square in cross-section
Probably Venetia

厚い透明なブルーの層で白い層を挟み込んだ構造で、ホワイトハートと同様、色調に美しい深みが与えられます。
長い角柱型のビーズをカットし、エッジをまるく研磨してあります。

このタイプのビーズは、16世紀にスペイン人により南米に運ばれました(当時の生産地はヴェネチアなど諸説あります)。
"Nueva Cadiz"の名は16世紀のスペインの植民地Nueva Cadiz (南米、現在ベネズエラ領)に由来しています。

16世紀のものならばトレードビーズの最初期ですが、当時のものは一般にもっと細いようです。
こちらは、19世紀にアフリカ交易用にヴェネチアで作られた可能性が高いです。


ミルフィオリ  Millefiori, African trade bead ミルフィオリ

19th century
Green Millefiori bead with stripe
Venetia, African trade bead

Length: 2.3cm Diameter: 1.0cm

アフリカン・トレード・ビーズの代表ミルフィオリ。ムッリーネmurrine(イタリア語)とも呼ばれます。
これは眼型のモザイク・チップを貼り付けたアイ・ビーズ。

ミルフィオリ(用語集へ)


ペガ玉 ミルフィオリ  Large tabular lozenge shape Millefiori, African trade beadペガ玉 ミルフィオリ  Large tabular lozenge shape Millefiori, African trade bead ペガ玉 大型(ミルフィオリ)

late 19th century - early 20th century
Large tabular lozenge shape Millefiori with composite murrine
Venetia, African trade bead

2.7×2.3×0.9cm

シェブロン型のチップを貼り付けたミルフィオリ。
筒型ではなく平板型の特殊な意匠で、ペガ玉と呼ばれます。数が少なく、評価も高いビーズ。


バウレ "Baule", African trade beadバウレ "Baule", African trade bead バウレ玉

17th century - 18th century
"Baule" or "Face" bead
Netherlands, African trade beads

1.7×1.4×1.0cm

コートジボワール Côte d'Ivoire のバウレ Baule (Baoulé) 族との交易用にオランダで製作された玉。その造形から"フェイス・ビーズ"とも呼ばれます。女性が身に着けたそうです。
バウレ族は仮面(マスク)の文化で有名ですが、このビーズも何だか仮面の顔に似ているような気がします。
アフリカン・トレード・ビーズは大量に作られましたが、"バウレ"は非常に数が少なく、稀少です。

現在アフリカでレプリカが作られていますが、アンティークのものとはかなり異なります。

バウレ族の仮面の画像はこちら▼
バウレ族仮面:ボストン美術館所蔵(米)
バウレ族仮面:ブルックリン美術館所蔵(米)
バウレ族仮面:ブルックリン美術館所蔵(米)


コーラル(イミテーション) Red glass bead simulating coral, African trade bead コーラル(イミテーション)     

19th century
Red glass bead simulating coral
Bohemia, African trade bead

Length: 3.8cm Diameter: 1.4cm

珊瑚を模したビーズ。型押し。
ガラスなので、当然、珊瑚よりはかなり重いです。


カンネッテ(すじ玉) "Cannette", Small drawn striped beads African trade beads  カンネッテ(すじ玉)

19th century - ealy 20th century
"Cannette", Small drawn striped beads
Venetia or Netherlands, African trade beads

Diameter: 約5mm

側面に縞模様のあるビーズ。
白・ピンク・水色の3色。
パームオイルの交易に使用されました。

とんぼ玉はこのような連の状態で市場に出回ることが多くあります。

カンネッテ(用語集へ)


ホワイトハート "White hearts", Drawn beads ホワイトハート(レッド&ブルー)

"White hearts", Drawn beads
brite red & blue: early 20th century, Venetia
dark red: unknown

赤(大):Diameter: 約8mm
青:Diameter: 約6.5mm
ダーク・レッド(小):Diameter: 約3mm

中心に白いガラス、その上に透明な色ガラスを被せた2層構造が特徴。表面の色の発色を良くすることを意図して作られました。
最も多いのが赤。その他、青、黄、オレンジ、緑色等。
交易品として、アフリカ、北米、中南米、東南アジア等、世界各地へ運ばれました。

ホワイトハート(用語集へ)


ホワイトハート&イエローハート "Cornaline d'Aleppo Beads"; mixed white and yellow hearts, Wound beads African trade beads 中型ホワイトハート&イエローハート

18th century - early 19th century
"Cornaline d'Aleppo Beads"; mixed white and yellow hearts, Wound beads
Probably Venetia, African trade beads

最大 Hight: 1.2cm Diameter: 1.3cm

アフリカ出土。
手前の2個がイエローハート(中心が淡い黄色)、後ろ3個がホワイトハート。
周りの赤いビーズは上と同じホワイトハートの連。


オランダ管玉 "Flanders" Netherlands, African trade beads オランダ管玉

mid 19th century
"Flanders"
Netherlands, African trade beads

Length: 1.4~2.0cm

オランダ製。「フランダース」と呼ばれます。


ヘブロン "Hebron" ヘブロン

14th - 19th century
"Hebron", Wound beads made in Hebron

Hight: 0.9cm Diameter: 1.4cm

ヨルダン川西岸ヘブロンで作られたビーズ。
ガラスを作るのに必要なアルカリ分として死海の塩を使用したといわれ、「死海ビーズ」とも呼ばれます。
ヨルバ族に伝世していることから「ヨルバ発掘ビーズ」と呼ばれることもあるが、ヨルバのみならず広く伝えられたビーズです。

緑色、黄色のものが多い。水玉紋を貼り付けたものもあります。大型のものはMunjirムンジール、小型のものはHershハーシュと呼ばれます。

スーダンやアフリカ西海岸で珍重されました。しかし、1930年代までには貴重視されなくなったため、ハウサ人商人がスーダン女性から買取り、ヘブロン・ビーズの丸い縁を研磨し平らにして、再び売ったそうです。これらのビーズは、ハウサ人の都市Kanoカノ(現ナイジェリア領)の名前をとって「カノ」とも呼ばれます。


イスラム祈りのビーズ Beads for the Muslim market, Bohemia イスラム祈りのビーズ、聖者のビーズ

19th century - 20th century
Beads for the Muslim market, Bohemia
Ruby red glass Hajj Islamic beads

大: 3.3cm×2.2cm
円形: Diameter: 1.3cm

ボヘミア産。イスラムの伝統的な「星と月」のモチーフや、アラビア文字が書かれています。
メッカへの巡礼者が身に着けたビーズ。ハッジ(Hajj, 大巡礼)を行った者のみが身に着けることを許されたとも言われています。

円形ビーズの文字は「ムハンマド(モハメッド)」と書かれているそうです。

こちらはレプリカの可能性があります。


エチオピアン・チェリー "Ethiopian cherry", Bohemian Glass Beads used in Ethiopian Trade エチオピアン・チェリー

late 19th century - mid 20th century
"Ethiopian cherry", Bohemian Glass Beads used in Ethiopian Trade

Length: 2.2cm Diameter: 1.9cm

ボヘミア産。
主にエチオピアで流通していたビーズ。

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* ヌエバ カディス Nueva Cadiz
16世紀初頭にCubagua島(現ベネズエラ領)につくられたスペインの植民地。南米におけるスペインの最初の植民地であり、大量の真珠が採れ繁栄した(奴隷貿易も行われていた)が、乱獲により真珠が枯渇し、更に、1543年に地震と津波が襲い、町は廃墟となった。
Nueva Cadizとは「新しいCadiz」の意味。Cadizは古代からあるスペイン南部の港町で、コロンブスの第2次と第4次の航海時にはCadizから出港した。
* ヘブロン Hebron
古代からある都市のひとつで、古くからガラス製造が行われていた。ユダヤ教、イスラム教双方の聖地。現在はパレスチナ自治区。

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